最近、日本でもよく耳にする「予防」。
イエテボリ大学の研究を真摯に受けとめたスウェーデンの歯科医師たちは、いち早く政府に働きかけて予防システムづくりに動きました。
まず76年に歯科衛生士業務を見直し、治療の助手ではなく、患者の口腔ケアを責任を持って指導する、歯周治療と予防のエキスパートであると位置付けたことです。歯科衛生士の主な職場は歯科医院と地域ごとに設けられた「歯科保健所」。これは”すべての国民に平等に予防と治療機会を”という目的で設立された公立の医療サービス機関で、すべての住民が定期的にプラークコントロールケアと指導および治療も受けることができます。
20歳未満ならチェックアップも歯科医院での治療も無料なので、人々はこどもの時から歯の健診を生活習慣として定着させられるのです。「両親への出産前指導から始まり、乳児でも歯が生え始める頃からチェックアップの義務があります。治療ではないので、こどもにとってそこは気持ちがよくなる、楽しいことを教えてくれる場所。だからスウェーデンでは歯医者が怖いという感覚はないんですよ」と先生。しかも個人の状態に応じてケアやクリーニングの方法、通う頻度も異なり、疾患のある人には専用のプログラムが組まれます。
「この部分はフロスよりも歯間ブラシが適している、など自分では判断つかないですよね。道具の選び方もきめ細かく指導されるので、当然健康レベルは上がります。チェックアップに通う人に比べて、通わない人が疾患にかかる確立は約6倍といわれています」。
またスウェーデンの歯科治療は、科学的根拠を重視することから、一度治療をしたら二度と悪化させないことが常識。それには綿密なメインテナンスが必要です。このような考え方にもとづく20年、30年の継続の結果を示す例として、3歳児むし歯率が、1979年の80%から6年後には4%へ減少するなど、大きな成果を上げています。